禁断の実の美女
TSUTAYAに行っても、美女シリーズのレンタルがいまひとつ伸びていないので、これから少しずつ書いていこうと思っています。
もちろん、ここに書いたからといって、レンタルが伸びるわけではないのですけれど。
一人でも多くの人に美女シリーズをもう一度観てもらいたい。
そんな想いです。
ここに来られる方はたいてい観られている方かもしれませんが。
前に観られた方もまた思い出して、レンタルにでも走っていただけるとありがたいです。
正月特選ミステリー 『禁断の実の美女 江戸川乱歩の「人間椅子」~そのまま抱いて!』~
美女シリーズの第22作。
監督:貞永方久、脚本:ジェームズ三木、山下六合雄。
【あらすじ】
名探偵・明智小五郎(天知茂)は、北海道から東京へ帰る飛行機の中で人気女流ミステリー作家の北見佳子(萬田久子)と同席した。
佳子の美しさに一目惚れをしてしまった明智だったが、直後、佳子の婚約がマスコミに発表される。
婚約相手は、宝石商・高杉大作(内田朝雄)の息子・高杉浩太郎(中島久之)だった。
しかし、佳子の周辺には二人の婚約を好ましく思わない人間が少なからず存在した。
佳子の元夫・土田(山本紀彦)と佳子の元担当編集者・野呂武信(羽生昭彦)である。
二人の男は、佳子の美貌と魅力が忘れられず、常に彼女の周りをつきまとっていたのだ。
ある夜、佳子と明智は東洋ホテルで夕食を一緒にする約束だったのだが、ホテルの化粧室で佳子が何者かに襲われる。
幸い、命には別状がなかったが、その後も佳子の周辺で怪事件が頻発するのだった。
まずは、高杉浩太郎の妹・高杉悠子(小田桐かほる)が佳子の家の書斎で何者かに殺害される。
悠子は、推理作家志望なので、佳子のもとで小説の勉強をしていたのだった。
悠子は、書斎にある安楽椅子に座った直後に殺害されたようなのだが、不思議なことに殺人者は、椅子の中から針のようなもので背後から一突きにして殺したらしい。
警察は、その椅子の製作者・黒川純一(レオナルド熊)を容疑者として追跡する。
黒川は家具工房からすでに姿を消していたのだが、黒川の自宅の部屋から彼の手記のような物が発見された。
捜査陣は、その手記を読んで戦慄する。
黒川は、自らの容貌があまりに醜いことに絶望し、憧れの北見佳子に愛を告げることもできないので、空洞のある安楽椅子を作って、自らその椅子の中に入り、夜毎、佳子が自分の上に座ってくれるのを待って、椅子の中で生活を続けていたのだった。
椅子の皮一枚隔てた膝の上に、佳子を座らせ、彼女の肉体の感触を楽しむ。
それが世にも醜い黒川にとって、愛する人を抱くことができる、たった一つの方法だったのだ。
その後も、佳子の秘書・根岸咲子(森田理恵)が自宅マンションのシャワー室で刺殺され、ついには佳子の婚約者・高杉浩太郎までもが殺されてしまう。
警察は必死に黒川の姿を追うのだが、今度はその黒川が死体となって発見されてしまった。
混迷する事件の謎に、名探偵・明智小五郎は果敢に挑むのだが、やがて魔の手は名探偵の身にも及ぶことになる……
【オススメ】
天知版美女シリーズ全25作の中では後期に分類されると思います。
乱歩の通俗長編はほとんど映像化してしまい、この頃になると使える作品がそろそろ無くなってきたようで、ついに短編小説(しかも明智小五郎が出てこない作品)の2時間ドラマ化に踏み切ったという、ある意味で画期的な作品。
原作は江戸川乱歩の名作短編「人間椅子」ですが、それをもとにした、筋のまったく違う、美女シリーズのオリジナル・ストーリーです。
江戸川乱歩の小説の原理主義的なファンの方にはあまり人気のない作品なのですが、
美女シリーズの中では、フォーマット通りの典型的な作品。
「自ら作った安楽椅子の中に入って、人間の感触を楽しむ男」という設定と女流作家の佳子という設定のみを生かして、連続殺人事件を描き、本格ミステリにしてしまうところの変換の仕方が一つの見どころではないでしょうか。
本格ミステリにしては、犯人はバレバレなのですが、その分、ラブロマンスの部分を楽しめます。
『禁断の実の美女』は、脚本がジェームズ三木(と山下六合雄)なので、セリフが結構キザです。
とくに明智と佳子との二人の場面は、一言一言がキザでカッコよくてたまりません。
また、個人的には丸山秀美さんが出ておられたことでも、思い出深い作品となっています。
高杉浩太郎の二人の妹のうちの一人・高杉晴子の役でした。
彼女も容疑者の一人ですので、重要な役です。
しかも、悠子の方は北見佳子に好意的だったのに対して、晴子の方は北見佳子と対立します。
悠子のお葬式で、焼香に来た佳子に対して、
「あなたに焼香されても悠子は喜ばないと思います」
と言ったり、
墓参りに来た佳子の供えた御花を投げ捨てたり。
キツイ性格の女性の役が本当にうまかったので、当時の僕は、丸山秀美という女優さんは本当に気のキツイ人なのだと思っていました。
実物はとてもお優しい方なのですが。
とにかく綺麗です。
しかも、クライマックスの場面には、秀美さんの絶叫の場面もあったりして。
北見佳子役の萬田久子、高杉晴子役の丸山秀美さんだけではなく、『禁断の実の美女』には、高杉悠子役の小田桐かほる、根岸咲子役の森田理恵など美女がたくさん出ていますので、そういった意味でも楽しい作品です。
とくに秘書の根岸咲子(森田理恵)がシャワー室で殺害される場面は、なかなか見ごたえがあります。
あどけない顔の森田理恵が黒縁の眼鏡を外して、オールヌードになる場面は、今の人が見てもハマる部分があるのではないでしょうか。
本当に綺麗で、魅力的なヌードです。
そこへ凶器のナイフのドアップ。
作品の見せ場はやっぱり、黒川の手記の再現場面だと思います。
椅子の中から佳子を愛撫する黒川の妄想を映像化する場面なので、とても官能的に仕上がっています。
おかげで『禁断の実の美女』は美女シリーズの中でも指折りのエロティックな作品に数えることができるでしょう。
なんだかエロ日記みたいになってしまいましたが、美女シリーズなので、ご容赦ください。
いずれにしても冒頭からエンディングまで天知茂の魅力は全開です。
深い霧に押し包まれた高杉家連続殺人事件の謎を、名探偵の推理が見事に晴らしてくれます。
音楽もワルツ調の曲が新作の曲として使われていて、
椅子の中の男の妖しく、怪奇で、悲しいドラマを巧みに盛り上げています。
この曲は、北大路版の『日時計館の美女』でも使われています。
「あたかも吸血鬼のように、人の生き血を吸い尽くす巨大な椅子が
今夜もまた、暗闇の中で、復讐の呪文を呟き続ける……」(予告篇より)
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