2009年8月14日 (金)

『CRITICA』第4号のご案内

また一ヶ月近く、更新をサボってしまいました。

ひたすら高校の非常勤の仕事に追われています。

夏休みの間も。

探偵小説研究会の機関誌『CRITICA』の第4号が発売になりました。

こちらは商業出版ではなく、同人誌扱いになりますので、

一般の書店では手に入りません。

Critica4

興味をお持ちの方は、探偵小説研究会のホームページの方でご注文ください。

URLは、

http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/index.html

です。

また、『市川尚吾作品集』も同時に発売されました。

こちらも探偵小説研究会で扱っております。

CRITICA』第4号の内容は下記の通りです。

     第一特集 現代本格の状況

大量死大量生座談会―読者視点から語る第三の波  笹川吉晴×蔓葉信博×

羽住典子

×

川井賢二

大量死理論について  大森滋樹

綾辻行人『びっくり館の殺人』論  浦谷一弘

失楽鏡儀『匣の中の失楽』論  蔓葉信博

     第二特集 『幻影城』の時代

戻りからくり―連城三紀彦と泡坂妻夫  市川尚吾

泡坂ミステリ考―亜愛一郎シリーズを中心に  横井司

未熟の浮上―中島梓/栗本薫の登場した七〇年代  円堂都司昭

普遍と個別 幻影城評論叢書を巡る随想  

川井賢二

この世の旅人 田中文雄さんのこと  笹川吉晴

特別寄稿 田中文雄さん  飯野文彦

     探偵小説評論賞

選考経過/選評  波多野健 千野帽子×

羽住典子

レイモンド・チャンドラーは「盗まれた手紙」の夢を見たか?  小倉蛇

探偵達の新戦略  小田牧央

     解放区

エドガー・アラン・ポオとチャールズ・ダーウィン  佳多山大地

やさぐれと崇高  中辻理夫

ミステリドラマの現況  千街晶之

     特別区

続・断章後日譚―笠井潔の「魔境」  千街晶之

リアルの変容―軒下補論  市川尚吾

『CRITICA』のバックナンバーもあります。

第1号と第3号のみですが(第2号は完売した模様です)。

よろしくお願いします。

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2009年5月22日 (金)

禁断の実の美女

禁断の実の美女

TSUTAYAに行っても、美女シリーズのレンタルがいまひとつ伸びていないので、これから少しずつ書いていこうと思っています。

もちろん、ここに書いたからといって、レンタルが伸びるわけではないのですけれど。

一人でも多くの人に美女シリーズをもう一度観てもらいたい。

そんな想いです。

ここに来られる方はたいてい観られている方かもしれませんが。

前に観られた方もまた思い出して、レンタルにでも走っていただけるとありがたいです。

正月特選ミステリー 『禁断の実の美女 江戸川乱歩の「人間椅子」~そのまま抱いて!』~

美女シリーズの第22作。

監督:貞永方久、脚本:ジェームズ三木、山下六合雄。

【あらすじ】

名探偵・明智小五郎(天知茂)は、北海道から東京へ帰る飛行機の中で人気女流ミステリー作家の北見佳子(萬田久子)と同席した。

佳子の美しさに一目惚れをしてしまった明智だったが、直後、佳子の婚約がマスコミに発表される。

婚約相手は、宝石商・高杉大作(内田朝雄)の息子・高杉浩太郎(中島久之)だった。

しかし、佳子の周辺には二人の婚約を好ましく思わない人間が少なからず存在した。

佳子の元夫・土田(山本紀彦)と佳子の元担当編集者・野呂武信(羽生昭彦)である。

二人の男は、佳子の美貌と魅力が忘れられず、常に彼女の周りをつきまとっていたのだ。

ある夜、佳子と明智は東洋ホテルで夕食を一緒にする約束だったのだが、ホテルの化粧室で佳子が何者かに襲われる。

幸い、命には別状がなかったが、その後も佳子の周辺で怪事件が頻発するのだった。

まずは、高杉浩太郎の妹・高杉悠子(小田桐かほる)が佳子の家の書斎で何者かに殺害される。

悠子は、推理作家志望なので、佳子のもとで小説の勉強をしていたのだった。

悠子は、書斎にある安楽椅子に座った直後に殺害されたようなのだが、不思議なことに殺人者は、椅子の中から針のようなもので背後から一突きにして殺したらしい。

警察は、その椅子の製作者・黒川純一(レオナルド熊)を容疑者として追跡する。

黒川は家具工房からすでに姿を消していたのだが、黒川の自宅の部屋から彼の手記のような物が発見された。

捜査陣は、その手記を読んで戦慄する。

黒川は、自らの容貌があまりに醜いことに絶望し、憧れの北見佳子に愛を告げることもできないので、空洞のある安楽椅子を作って、自らその椅子の中に入り、夜毎、佳子が自分の上に座ってくれるのを待って、椅子の中で生活を続けていたのだった。

椅子の皮一枚隔てた膝の上に、佳子を座らせ、彼女の肉体の感触を楽しむ。

それが世にも醜い黒川にとって、愛する人を抱くことができる、たった一つの方法だったのだ。

その後も、佳子の秘書・根岸咲子(森田理恵)が自宅マンションのシャワー室で刺殺され、ついには佳子の婚約者・高杉浩太郎までもが殺されてしまう。

警察は必死に黒川の姿を追うのだが、今度はその黒川が死体となって発見されてしまった。

混迷する事件の謎に、名探偵・明智小五郎は果敢に挑むのだが、やがて魔の手は名探偵の身にも及ぶことになる……

【オススメ】

天知版美女シリーズ全25作の中では後期に分類されると思います。

乱歩の通俗長編はほとんど映像化してしまい、この頃になると使える作品がそろそろ無くなってきたようで、ついに短編小説(しかも明智小五郎が出てこない作品)の2時間ドラマ化に踏み切ったという、ある意味で画期的な作品。

原作は江戸川乱歩の名作短編「人間椅子」ですが、それをもとにした、筋のまったく違う、美女シリーズのオリジナル・ストーリーです。

江戸川乱歩の小説の原理主義的なファンの方にはあまり人気のない作品なのですが、

美女シリーズの中では、フォーマット通りの典型的な作品。

「自ら作った安楽椅子の中に入って、人間の感触を楽しむ男」という設定と女流作家の佳子という設定のみを生かして、連続殺人事件を描き、本格ミステリにしてしまうところの変換の仕方が一つの見どころではないでしょうか。

本格ミステリにしては、犯人はバレバレなのですが、その分、ラブロマンスの部分を楽しめます。

『禁断の実の美女』は、脚本がジェームズ三木(と山下六合雄)なので、セリフが結構キザです。

とくに明智と佳子との二人の場面は、一言一言がキザでカッコよくてたまりません。

また、個人的には丸山秀美さんが出ておられたことでも、思い出深い作品となっています。

高杉浩太郎の二人の妹のうちの一人・高杉晴子の役でした。

彼女も容疑者の一人ですので、重要な役です。

しかも、悠子の方は北見佳子に好意的だったのに対して、晴子の方は北見佳子と対立します。

悠子のお葬式で、焼香に来た佳子に対して、

「あなたに焼香されても悠子は喜ばないと思います」

と言ったり、

墓参りに来た佳子の供えた御花を投げ捨てたり。

キツイ性格の女性の役が本当にうまかったので、当時の僕は、丸山秀美という女優さんは本当に気のキツイ人なのだと思っていました。

実物はとてもお優しい方なのですが。

とにかく綺麗です。

しかも、クライマックスの場面には、秀美さんの絶叫の場面もあったりして。

北見佳子役の萬田久子、高杉晴子役の丸山秀美さんだけではなく、『禁断の実の美女』には、高杉悠子役の小田桐かほる、根岸咲子役の森田理恵など美女がたくさん出ていますので、そういった意味でも楽しい作品です。

とくに秘書の根岸咲子(森田理恵)がシャワー室で殺害される場面は、なかなか見ごたえがあります。

あどけない顔の森田理恵が黒縁の眼鏡を外して、オールヌードになる場面は、今の人が見てもハマる部分があるのではないでしょうか。

本当に綺麗で、魅力的なヌードです。

そこへ凶器のナイフのドアップ。

作品の見せ場はやっぱり、黒川の手記の再現場面だと思います。

椅子の中から佳子を愛撫する黒川の妄想を映像化する場面なので、とても官能的に仕上がっています。

おかげで『禁断の実の美女』は美女シリーズの中でも指折りのエロティックな作品に数えることができるでしょう。

なんだかエロ日記みたいになってしまいましたが、美女シリーズなので、ご容赦ください。

いずれにしても冒頭からエンディングまで天知茂の魅力は全開です。

深い霧に押し包まれた高杉家連続殺人事件の謎を、名探偵の推理が見事に晴らしてくれます。

音楽もワルツ調の曲が新作の曲として使われていて、

椅子の中の男の妖しく、怪奇で、悲しいドラマを巧みに盛り上げています。

この曲は、北大路版の『日時計館の美女』でも使われています。

「あたかも吸血鬼のように、人の生き血を吸い尽くす巨大な椅子が

今夜もまた、暗闇の中で、復讐の呪文を呟き続ける……」(予告篇より)

Bijyo22a

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2009年5月21日 (木)

悪魔ここに誕生す……

古い作品で恐縮なんですが、

横溝正史『悪魔が来りて笛を吹く』についての感想を

ミステリ用のブログの方に書きました。

URLは、

http://amachi-kogoroh.at.webry.info/200905/article_1.html

です。

Akumagakitaritehuewohuku

今、これを取り上げたことには、

何の意味もありません。

ただ、自分の頭の中を整理するためだけに書きました。

申し訳ありません。

しかし、もちろん、

まだ読んでいない若い人に読んでほしい、とは思っています。

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2009年1月 2日 (金)

謹賀新年2009

あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします。

年末忙しかったので、また更新をサボってしまいました。

毎年、同じことを書いてはいますが、

今年こそ、もうちょっと頑張って、更新しようとは思っていますので、

また、時々、見に来てやってください。

できれば、知人の方は、

「見ました」

というコメントでもいいので、残していただけるとありがたいです。

実は、今も日記を書いている場合ではないのです。

締め切りを過ぎた原稿を抱えて、各方面にご迷惑をおかけしてしまっているのですが、

何とか書きますので、どうかご容赦ください。

今年の目標は、

やはり研究論文を書くことです。

昨年、評論は書いたのですが、研究論文を書けなかったので、

そこが反省と後悔です。

今年は書かねば!!

ちなみに昨年書いた評論は、コレです。

32090587

探偵小説研究会編著『ニアミステリのすすめ 新世紀の多角的読書ナビゲーション』(原書房、2100円)

に「〈安楽椅子探偵〉の正体」という文章を書かせていただきました。

もともとは光文社から出ている『ジャーロ』という雑誌に、

探偵小説研究会のメンバーがリレー連載をしていた評論のシリーズに、

書き下ろしの原稿を加えて、刊行されたのが『ニアミステリのすすめ』です。

どことなく似ていて、それでいて違うという

新旧内外のミステリ作品を比較考察しながら、読書案内をしてゆく

という内容ですので、

ブックガイドの一つとしても是非よろしくお願いします、

評論集と銘打ってはいますが、そんなに難しくはありません。

是非。

また、探偵小説研究会の機関誌『CRITICA』に昨年は原稿を書けなかったのも、反省点です。

今年こそは書かないと、と思っております。

探偵小説研究会では、今年も出版企画が目白押しですので、

注目しておいてください。

探偵小説研究会は、こちらです。

http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/index.html

昨年の花園大学の講演会で、綾辻行人さんが、

「ミステリって、こんなに面白いんだよ、ということをもっと広めて行きましょう」

というような内容のことを言っていたのですが、

自分もまさに同感で、

まずは批評面で、

ミステリ(とくに本格ミステリ)って、こんなに面白いんだということを

一人でも多くの人に伝えていけるように

力を尽くしてゆきたいな、と思っております。

紙媒体だけではなく、ネット上でも

いろいろなことができないか、と考えています。

そこは現在、画策中ですので、今は言えませんが。

そしてやっぱり、今年は小説を書きたいです。

昨年は仕事に追われて書けませんでした。

今年こそはうまく時間を作って、書いて、応募してゆきたいと思います。

どうしても、やりたいことがあるので。

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2008年12月10日 (水)

やっと

学校の仕事が一段落つきました。

といっても、まだ一段落で、採点等が残っていますが。

もう少し余裕ができたら、また書きます。

そうしている間に、

『2009 本格ミステリ・ベスト10』が出ましたね。

052

みなさま、よろしくお願いします。

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2008年11月27日 (木)

もうしばらくお待ちください

ちょっと、あまりに忙しくて、日記を書く時間があまりないのですが、

原書房の『本格ミステリ・ベスト10 2009』について、

検索して、ここへ来てくださる方が多いようなので、

いちおう書いておきます。

12月2日発売と聞いていますので、もうしばらくお待ちください。

来週の火曜日ですね。

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2008年11月22日 (土)

本多孝好『チェーン・ポイズン』

ミステリ用のブログの方に、

本多孝好『チェーン・ポイズン』の感想を書きました。

Chain_poison

URLは、こちらです。

http://amachi-kogoroh.at.webry.info/200811/article_4.html

よければ。

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2008年11月19日 (水)

ゲラが送られてきました。。。

『本格ミステリ・ベスト10 2009』(原書房)のゲラが送られてきました。

目次を見ていると、テンションが上がります。

研究会メンバーの原稿は事前に見ることができるのですが、

各作家の近況のところなどは初めて目を通すので、

楽しいです。

各評論家の投票結果のところも、

あー、あの人らしいなとか、

ふーんとか思いながら見ることができて、楽しいです。

面識がなくても、ふだん書いておられるもので、

だいたいどのような趣味かわかるようなところはあるので、

その辺を念頭において、投票結果を見ると結構、楽しいものです。

ちなみに今回は

目玉の特集が個人的に結構オススメです。

それについては、また詳しく書こうと思いますが、

12月2日発売予定のようですので、

お楽しみに。

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2008年11月16日 (日)

有栖川有栖『女王国の城』

ミステリ用の日記を別立てにしました。

何をしているんだ?

という感じですが、いろいろ考えていることがあるので、

どうかご容赦ください。

そちらに有栖川有栖の『女王国の城』について書きました。

Jooukokunoshiro

URLは、こちらです。

http://amachi-kogoroh.at.webry.info/200811/article_3.html

昨年の本格ミステリ・ベスト10で第1位の作品ですので、

わざわざ私が薦める必要もありません。

ただ、こちらで、感想を集めて、少しずつ積み重ねてゆくことで、

いつかそれなりのものにしたいかな、と考えています。

まだ、工事中なので、貧弱ではあるのですが、

現在、いままでに書いた文章を整理中ですので、

少しずつアップして、

少しずつ充実させていきたいところです。

大事なことは積み重ねですので、

ゆっくり時間をかけていきます。

ただ、

天知探偵事務所の本局はこちらですので、

こちらですべてご案内してゆきますから、

まず、こちらに来ていただくので、大丈夫です。

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2008年11月 9日 (日)

ニアミステリのすすめ―新世紀の多角的読書ナビゲーション―

ずっと前に出た本なのですが。。。

ちょっと原稿に追われているので、

本の紹介で今日の日記はご容赦いただきます。

32090587

探偵小説研究会編著『ニアミステリのすすめ 新世紀の多角的読書ナビゲーション』原書房、2100円

今年の夏に出た分です。

私の文章も載っております。

光文社から出ている『ジャーロ』という雑誌に、

研究会のメンバーでリレー連載していた評論を集めたミステリ評論集です。

それにいくつか書き下ろし原稿を加えて刊行されました。

どことなくよく似た二つ以上の新旧・内外のミステリ作品を

比較考察批評しています。

私は、

バロネス・オルツィの『隅の老人の事件簿』と

有栖川有栖の『山伏地蔵坊の放浪』とを比較して、

「〈安楽椅子探偵〉の正体」という文章を書きました。

『ジャーロ』にリレー連載されていた頃には、

私はまだ探偵小説研究会に入ってなかったので、

私の原稿は書き下ろしです。

ずっと案内するのを忘れていました。

申し訳ありません。

よろしくお願いします。

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2008年11月 7日 (金)

ブックレビューの担当が決まりました。。

原書房から出る

『本格ミステリ・ベスト10』のブックレビューの担当が

ほぼ決まりました。。。

ということは、

ベスト10の投票結果が出た、ということですが。

言えなくて申し訳ないのですが、

なるほど

という感じです。

目の前に締め切りが迫っているので、

大急ぎで書きます。

今年はどんな表紙になるのでしょう?

楽しみです。

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2008年4月12日 (土)

犯罪ホロスコープⅠ

法月綸太郎の新作です。

『犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題』(光文社、838円)

作者と同名の探偵・法月綸太郎の活躍を描く本格ミステリの短編集。

今回は、黄道十二宮の星座のうち半分、牡牛座から乙女座とそれらにまつわるギリシャ神話を題材にした作品集。

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「ギリシャ羊の秘密・牡羊座」

アリョーシャというニックネームを持つ名無しの権兵衛のホームレスが河川敷で殺された事件。被害者の着ていたゴールデン・フリースのジャケットはなぜ持ち去られたのか?

「六人の女王の問題・牡牛座」

元劇団員で売れっ子ライターの虻原サトルが劇団の主宰者・赤星剛志郎の住むマンションの敷地内で転落死体として発見された。被害者の残した俳句の中にはどのようなメッセージが込められていたのか? 

「ゼウスの息子たち・双子座」

綸太郎が小説執筆のために缶詰にされた山中湖畔の「四つ葉ホテル」で、自称ルポライターの恐喝屋が殺された。被害者が最後に口走った「偽者にやられた……」の意味は?

「ヒュドラ第十の首・蟹座」

巣鴨の染井霊園で一人の男が殺された。被害者の自宅も荒らされたのだが、その際に犯人が右と左を合わせて五枚の軍手(右2枚、左3枚)を使用した。なぜ、犯人は、五枚の軍手を使用したのか?

「鏡の中のライオン・獅子座」

〈女王様〉の呼び名を持つトップ女優の仙道美也子が自宅のマンションの駐車場で死体となって発見された。死体の耳には不似合いなバタフライピアスが片方にしかなかった。そして、女優と噂のある、年下の新進脚本家・滝本吉樹の自宅で、ピアスの片方が見つかったが……。

「冥府に囚われた娘・乙女座」

〈水中毒で昏睡状態に陥った女子大生から友人のもとに「毎日、鉢植えの植物に水を遣りにきてほしい」というメールが届いた。友人が行ってみると、「鉢植えの植物」というのは植物状態となった彼女自身のことだった〉という都市伝説の元ネタとなった実際の事件(もちろん作者の創作)の謎。しかも、現実の事件の方では、メールを送られた男性が熱中症で死体となって発見された……。

*********

ずっと十年近く悩んでいた作者の、悩み無き(?)作品集。。。

作者自身の言葉にも〈気楽に読んで愉しめる、そして後にはいっさい何も残さない、そんな娯楽奉仕に徹したミステリー集〉とあります。

ある意味、言葉通り、雑誌(もしくは夕刊誌)発表の際には、

犯人当ての形式をとっていた作品(「ゼウスの息子たち」、「ヒュドラ第十の首」)もあるぐらいで、

本格ミステリとしては読みやすく、まさに謎解きを〈愉しめる〉一冊だと思います。

とくに個人的には「ゼウスの息子たち」が気に入っています。

作者自身は〈犯人当てとしては初歩的なレベル〉としていますが、たぶんみなさんにも喜んでいただけるのではないでしょうか。

僕たちの「思い込み」をうまく利用してくれています。

「ギリシャ羊」もなるほどと思いましたし、「六人の女王」では勉強になりました。

「冥府に囚われた娘」の都市伝説は作者の創作のようですが、それ自体がなかなかうまくできているなぁ、と感心。。。

これまでの作品の、悩める探偵・法月綸太郎が好きだった僕としては、ちょっと物足りない部分もなくはないのですが、

さすが本格ミステリの第一線で活躍し、本格ミステリを熟知している作者による作品集なので、むしろ多くのみなさんに愉しんでいただけるのではないかと思います。

ただ、作者の言葉を鵜呑みにしてはいけないな、とも思うのです。

例えば、「ギリシャ羊の秘密」は事件そのものが、

東野圭吾の『容疑者Xの献身』とそれに対する笠井潔の批評を意識してのことだと思うし、

「六人の女王」の暗号の問題でも、『容疑者X』で言及されたNP問題が出てきており、

作者が本格ミステリの抱える問題を、数学の問題として捉えていることの表れだといえるでしょう。

また、登場人物の名前をめぐる謎、トリック、ロジックが頻繁に用いられるところなどは、柄谷行人の影響だといっても間違いはないと思われます。

さらに、全体がギリシャ神話に見立てられているところは、

作品の中で犯人が意図的に行う見立てとは違い、

(ご都合主義に陥る一歩手前ではあるかもしれませんが)

物語の展開が自然とギリシャ神話(など)に引き寄せられてゆくという不思議(?)を描いているところに、

現在の作者の立っている地平が象徴されているようで、興味深いのです。

作者の新しい一歩なのかもしれません。

一見、純粋に謎解きミステリを書いたような身振りは見せていますが、

作品にそういった批評性を織り込んでゆく姿勢は、

健在なのではないかと思います。

後半の天秤座から魚座の短編集も楽しみです。

水瓶座や射手座も入っているし。。。

へびつかい座はどうするんやろう。。。

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2008年1月29日 (火)

藤野恵美『ハルさん』

藤野恵美の『ハルさん』(東京創元社)です。

昨年の『本格ミステリ・ベスト10』第23位。

自分はベスト5の投票では、票を入れなかったのですが、結構、好きな作品なので、書いておきたくなりました。

『ハルさん』は「日常の謎」系の本格ミステリなので、もちろん陰惨な殺人事件などは出てきません。とってもハートフルな父と娘の物語。

主人公の「ハルさん」こと春日部晴彦は、若くして妻を喪った、気の弱い人形作家。

幼い「ふうちゃん」こと春日部風里と二人で暮らしている。

連作短編になっていて、

第一話が「ふうちゃん」の幼稚園時代、第二話が小学校時代、第三話が中学校時代、第四話が高校時代、第五話が大学時代となっており、「ふうちゃん」が育ってゆく過程でさまざまな不思議な出来事が起ります。

「ふうちゃん」が幼稚園の友達の卵焼き泥棒の疑いをかけられたり、小学校の夏休みに失踪したり。

気の弱い「ハルさん」は、そのたびにうろたえるのですが、すると、「ハルさん」の頭の中に亡くなった妻の「瑠璃子さん」の声が聞こえてきて、すべてを見通す名探偵のように一つ一つ謎を解いていってくれます。

そうして、謎が解けるとともに、「ふうちゃん」も「ハルさん」も少しずつ一緒に成長してゆき、やがて「ふうちゃん」は綺麗なお嫁さんになってゆく、という物語。

「日常の謎」系の心臓でもある伏線もなかなかきっちり張られているので、むしろ、ミステリなどあまり読まないという入門者の方にも強くオススメの作品です。

女性らしい発想と、児童文学の作家らしい温かい視線がうまくかみ合って、本格ミステリとしてはちょっと物足りない部分もある(とくに後半は失速気味)とはいうものの、一人の女性の成長の物語として、あるいは娘を持つ一人の父親自身の成長の物語として、なかなか読んでいて楽しいものがあります。

とくに一話ごとの「ふうちゃん」の描き分けは見事で、絵本を手に持って無邪気に探偵衣装を着ていたあどけない「ふうちゃん」が、成長するにつれ男親の「ハルさん」からは見えない存在になってゆき、やがて真っ白なウェディング・ドレスの似合う素敵な女性に、少しずつ微妙に変化してゆきます。

そして、起こる事件の内容も、「ふうちゃん」の年齢に応じた事件がそれぞれ用意されています。

第五話のタイトルが「人形の家」であることも、「ふうちゃん」の成長の物語であることを表しているのかもしれません。

もちろん、「ふうちゃん」が離婚をしたりするわけではないのですが、人形作家である「ハルさん」がいくつかの人形を作りながら「ふうちゃん」を育ててゆくことで、最終的に「ふうちゃん」は〈人形〉ではなくて一人の〈人間〉として「ハルさん」のもとから巣立ってゆく、そんな意味合いがあるのかもしれません。

しかし、やはりタイトルが「ハルさん」なので、時間があれば「ハルさん」の成長についてもゆっくり考えてみたい気がします。

個人的には続編も期待したいところですが、これはこれで終わった方がいいのかもしれない、と思う部分もなくはないです。

ラストは結構、感動できます。

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2007年11月22日 (木)

『鉄道―関西近代のマトリクス』

また、更新をサボってしまいました。

ただ、今、ゼミレポートに追われているので、少しだけ。

六月に学会発表した分が、やっと本になりました。

『鉄道―関西近代のマトリクス』日本近代文学会関西支部編

049

和泉書院という出版社から「いずみブックレット」という形で出ました。

定価は、945円で、500部限定だそうです。

私は、その中に、

学会発表をほぼそのまま原稿にした、

「蒼井雄『船富家の惨劇』の時刻表トリック」という論文を載せています。

私の原稿以外では、

田中励儀「関西の鉄道と泉鏡花」

田口律男「『関西』と『鉄道』のディスポジション―横光利一の場合―」

原武史「関西私鉄をめぐる断層―三人のご報告を拝聴して―」

が掲載されています。

よろしくお願いします。

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2007年11月 6日 (火)

投票終了

昨夜、22時頃

原書房の『本格ミステリ・ベスト10 2008』の

投票を済ませました。

11月5日が締め切りだったので。

そして、

真夜中の12時半くらいに、

今年の本格ミステリのベストランキングの

速報結果が出ました。

ほほー、なるほど

という感じです。

今年は力作ぞろいの豊作だったと思います。

みなさんにお知らせできるのは、

やはり『本格ミステリ・ベスト10』の

刊行を待っていただくしかないのですが、

今、

探偵小説研究会では、

この真夜中に、ブックレビューの分担を

決めております。

今年から研究会に入った私も、

ある作品(第9位の作品)のブックレビューを

担当することになりました。

あと、もうひと頑張り。

ラストスパートです。

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2007年11月 2日 (金)

仕事終了

また、

永いこと更新をサボってしまいましたが、

仕事に追われてました。

原書房の『本格ミステリ・ベスト10 2008』の

原稿の仕事です。

今回は、初の単独のコーナーも担当させてもらえて、

原稿用紙10枚ほどではあるのですが、

ずいぶん張り切っていたのです。

にもかかわらず、

結局また締め切りに遅れてしまい、

出版社の方や研究会の方にも

ご迷惑をおかけしてしまいました。

申し訳ございません。

が、

お仕事自体は、

しんどかったけれども、楽しかったです。

来年は、遅れないように頑張ります。

とにかく終わりました。

あとは、

ベスト10の投票と、

その投票結果から発生する(?)ブックレビューのお仕事です。

また、

締め直して頑張らないといけませんが、

とりあえずは、

寝ます。

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2007年10月17日 (水)

三津田信三『首無の如き祟るもの』

ここのところ自分自身を見失っている感じなので、

そういう時は、仕事仕事と、探偵小説のことばかり

考えるようにします。

私の人生においてつねに、孤独を癒してくれたものは、

探偵小説であり、謎と論理の物語の魅力であり、

名探偵の名推理であったわけです。

もうじき本格ベスト10の投票があるので、

そろそろおさらいをしていかないといけない状況です。

その今年のベスト10の上位に必ず食い込んでくるだろうな、と思っているのが、

(いくつかあるのですが)

三津田信三の『首無の如き祟るもの』(原書房)です。

  041

東京の奥多摩地方の媛首(ひめかみ)村に代々続く、秘守(ひかみ)一族の次期当主の花嫁を選ぶ伝統的な儀式「婚舎の集い」において、殺人事件が勃発した。当主の長男・長寿郎の花嫁候補三人のうちの一人が首無し死体で発見される。しかも、現場からは長寿郎の姿も消えてしまうのだが、儀式の行なわれた山は、密室状態で、謎は深まる一方である。秘守一族は、いがみ合う三つの家が跡目を争っており、混乱が続く中、第二、第三の首無し死体まで発見されるのだ。古くから、秘守家を祟り続ける淡首(あおくび)様の怨霊の仕業か、それとも、巧妙なる連続殺人か……

首無し死体、四重の密室、男装の麗人、淡首様の祟り、謎の妖怪・首無しなど、本格ミステリファンだけでなく、ホラーファンも楽しめる要素がいっぱいのホラー系本格ミステリの傑作。

まず、やっぱり嬉しいのは、地方の旧家の因習に囲まれた土俗的な世界観。

まさに横溝ワールドの再生といった感じがミステリ・ファンには嬉しいところです。ああ、横溝正史が生きてたら、こんな新作を書くかもしれない、という雰囲気。読んでいると、自分も秘守家を(来訪者として)訪れていて、事件に立ち会っているようなリアリティを感じさせてくれます。

そして、もう一つ。戦後の探偵小説文壇の探偵小説ブームと世界観を接続させてくれているところも、ファンには嬉しいところ。

探偵小説通でない人には、とにかく首無し死体がゴロゴロ出てくるところを楽しんでもらえるといいかな、と。これでもか、という具合に、首が切断されます。

しかも、探偵小説においてはつねに、「なぜ切断されなければならなかったのか?」という命題があります。

それに対して、新しい解ではないのだけれども、いくつかを見事に複合させ、ひねってひねって、ひねりまくっているところに、この作品の魅力があります。

事件の真相を知った時、思わず「見事」と思いました。

本当に上手いです。

結末の二転三転(もっと)する、どんでん返しの連続にもびっくりさせられますし(ちょっとあざといかな? とも思ったのですが、ラストの結末で納得しました)、何よりも、「たった一つのある事実に気づきさえすれば」事件の謎が解けてしまう、というところがよくて、実際に探偵役の刀城言耶がそれを指摘したことによって、ぱたぱたぱたと謎が解けてゆく心地よさは、まさに本格の基本といった感じでたまりません。

私は、すっかり騙されてしまいました。

そして、ラストはホラーの味も、もちろん出てます。

全然、評論家らしいことが書けず、すみません。

ミステリについて書くときは、慎重になってしまいます。

もし、この作品について論じるのであれば、「探偵小説マニア」という切り口から入ることになるのかもしれません。

また、へこんだら、ミステリについて書いてみます。

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2007年9月11日 (火)

外出

体調は相変わらずなのですが、

どうしても出かけないといけない用事がいくつかあったので、

しぶしぶ外出しました。

給料日だったので、

早速、本を買ってしまいました。

都筑道夫『新顎十郎捕物帳』、戸川昌子『火の接吻』、多島斗志之『〈移情閣〉ゲーム』。

そう

講談社ノベルスの、綾辻・有栖川復刊セレクションの9月配本分です。

この復刊セレクションは、

11月までのようですが、

本音を言うと、もっと続くといいのに、と思ってしまいます。

作家の先生がかわってもいいので。

ただ、復刊があまりに増えると、ちょっと困ってしまいます。

個人的に・・・・・・

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2007年6月18日 (月)

花園大学公開講演会

告知です。

毎年恒例の花園大学公開講演会です。

パネルディスカッション『ミステリの魅力~犯人当てに魅せられて』

6月23日(土)午後1時30分~

花園大学無聖館ホール5F

入場無料

パネラー 麻耶雄嵩、大山誠一郎

司会 佳多山大地

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麻耶さんが喋られるというのは、結構、珍しいと思うので、

貴重というか、必聴ですね。

今年も豪華な客席になるのではないでしょうか。

私も客席で、ゆっくり聞かせていただきます。

興味のある方は、是非おこしください。

今、ミステリの勉強をするなら、断然、花園大学ですね。

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2007年3月16日 (金)

日下三蔵さんが一万人

先日、探偵小説研究会に初参加してきました。

というのも、私の歓迎会をしてくださったのです。

しかも、京都で開いてくださるという、申し訳ない状態。

一次会は京都の北の方の「オランダ屋」という喫茶店で。

作家の小森健太朗さん(代表作は『コミケ殺人事件』コミケ殺人事件 、昨年は、『魔夢十夜』魔夢十夜 も上梓。)、評論家の鷹城宏さん、つづみ綾さんと私の四人で。

主に、私の自己紹介と今の研究での興味について話し、探偵小説研究会がどのような活動をしているかについて説明していただきました。

本当に、みなさんには親切にしていただいて、あっという間に時間が過ぎてしまい、楽しい一日を過ごすことができました。

参加する前は、アホがバレて、とても恥ずかしい思いをするのではないか、とか、お話しについてゆけなくなり、とてつもなく凹んで帰るのではないか、といろいろ心配し、ガチガチに緊張していったのですが、気がついたら、一次会が終っており、「まだ帰りたくない」状態になっていた程で、こんなに楽しい思いは、本当に久しぶりでした。

よく、これまでさまざまな研究会や読書会に参加してきたものですが、つねに一抹の寂しさを感じていました。

それは、例えば、個人作家の研究会などに参加しても、メンバーはとてもいい人ばかりで、楽しいのだけれども、さて、その作家への愛情となると、集まっているみなさんと私とでは温度差があって、どことなく疎外感(他のメンバーが私を疎外しているのではありません。私が入りきれないのです。不勉強なもので)を感じていて、「ああ、これが探偵小説の集まりだったらどんなに素晴らしいだろう」とつねに思っていました。

それが、ついに実現した感じなのです。しかも、メンバーは日本のミステリ界で第一線で活躍されている作家や評論家の方たち。

私の興奮が伝わるでしょうか。

「ここが新たな私のホームになるといいのにな」というのが、正直な思いです。もちろん、そういうつもりで頑張って、みなさんの活動についてゆけるようにしたいと思っています。

二次会は、四条通りの東華菜館Photo_11 で、中華料理をいただきました。

070312_1932

070312_1933

昔から建物は知っていたものの、初めて入ったので、ちょっと感動。

さらに評論家の千野帽子さん文藝ガーリッシュ    素敵な本に選ばれたくて。 や、波多野健さんもお忙しいのに駆けつけてくださって、いよいよ本格的に。しかも、波多野健さんが俳句の波多野爽波の息子さんだということも判明し、千野帽子さんが改めて畏まっておられました。

波多野さん、千野さんが来られる前の話題で、私の考えを述べさせていただいたものなんですが、子供たちがミステリを読む絶対数が減っているのでは、という話をして、十年後、二十年後、果たして本格ミステリの書き手は、今ほどに登場してくれるんだろうか、また、読者の需要そのものがなくなってゆくのではないだろうか、という不安を吐露したところ、解決策(?)として小森さんが提案(?)されたのですが、日下三蔵さんが一万人いれば、大丈夫だろうということになり、日下さんが一万人いるということは、その下のレベルの層はかなりの人数になり、裾野は大変なことになっているだろう、と。そうなると、本格は絶対に大丈夫に違いない。確かに。

で、そこから、日下さんが一万人おられると、古本の値段はとんでもない高騰をするだろう、そして、デイトレーダーは古本に投機し、毎日、古本の値の動きをチェックするようになるだろう、さらに論創社などはM&Aを仕掛けられ・・・・・・

と、なかばSF的な盛り上がりをして、爆笑と。盛り上がりました。

面白かったです。ハマッてしまいました。日下三蔵さんが一万人に・・・・・・

とにかく楽しい一日でした。一日でも早く東京例会の方に合流しなければ、と思います。

みなさま、本当にありがとうございました。これから頑張ります。

ただ、終ってから、やはり肩はガチガチに凝っておりまして、大変なことになってました・・・

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2007年2月17日 (土)

ハナシにならん!

インフルエンザで死んでました。

昨年の夏頃に発売された本ですが、

田中啓文の『笑酔亭梅寿謎解噺2 ハナシにならん!』

ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺〈2〉

が面白いです。

連作本格落語ミステリの第2弾なんですが、(なので第1弾の『ハナシがちがう!』

ハナシがちがう!―笑酔亭梅寿謎解噺

も一緒にオススメしておきます)関西人にはとくに楽しめる内容になっています。

金髪で鶏冠頭の若手落語家・笑酔亭梅駆を狂言まわしとする、日常の謎系のミステリ。

いや、日常の謎系のものよりも、よりミステリ色は薄まっていて、ほとんど「落とし噺」に近い状態で、この物語そのものが新作落語のよう、ともいえなくもない。

関西人にとくにオススメなのは、作品の舞台背景が、今の関西のお笑いの世界をうまくモデルにしているところ。

主人公である笑酔亭梅寿(梅駆の師匠)の所属する芸能事務所が松茸芸能だったり、松茸芸能が芸人養成スクールMSSを持っていたり、M-1グランプリ以外に落語のO-1グランプリというのがあったり。とくに米朝師匠が麦昼師匠になっていたのには笑いました。

主人公の梅寿師匠はどうやら六代目笑福亭松鶴を、梅駆は笑福亭鶴瓶をモデルにしているように思われます。とくに梅駆はケツを出すあたりが。

今、上方落語は微妙な位置にあるのかもしれない。漫才に関していえば、M-1グランプリの影響もあって、中川家以降、若手がものすごく力をつけてきていて、空前の人気を誇っています。が、落語は(繁昌亭のオープンなどもありましたが)落語というジャンル自身の立ち位置に悩んでいるといえるかもしれません。少なくとも、この『ハナシにならん!』では、〈落語の危機〉が常に意識されています。

漫才作家ではなく若手漫才師自身がネタを考え、演じる今の漫才は、(言葉は古いですが)シンガーソングライター的な状況で、そのオリジナリティーと即興性が若い人を中心とする多くのオーディエンスを獲得しているといえるのでしょう。一方、落語はどうかというと、昔から継承された同じネタ(「古典」)を繰り返し演じ、作品の世界観も長屋や熊さん、八っつぁん、お伊勢参りなど、今の若い人には馴染みのない世界。もちろん、そこにはジャズのように、あのスタンダードのナンバーをどう演じるか、という楽しみ方があるのだけど、そうなってしまうと〈通〉のみが楽しめるジャンルとなってしまい、落語本来の大衆性が失われてしまう。そこのところにおいて、落語は〈迷っている〉といえるのかもしれません。

ジャズ好きの作者は、やはり落語とジャズの親近性を意識しているようですが、一方で、落語と本格ミステリの類似性もかなり意識しているように思われます。もちろん、本格ミステリと落語の共通性については、これまでの研究でもすでに言われているところですが、この作者は〈落語の危機〉と〈本格の危機〉とを重ねてみている部分があるのではないでしょうか。

ですので、

(あかん・・・負ける。落語は負ける・・・・・・)

という梅駆の危機意識(「猿後家」)を読んだ時に、私は昨年、笠井潔さんが表明されていた本格ミステリの危機のことを思い出してしまいました。

もちろん、〈本格が負ける〉かどうか(何に?)は、今、何とも言えませんが、この『ハナシにならん!』では、そういった〈落語の危機〉に対して、師匠の笑酔亭梅寿が各話で落語の可能性を披露展開してみせる、という内容になってます。この笑酔亭梅寿はかなりエキセントリックな人物で、かつ名探偵のような〈よく見える目〉を持った人物なのですが、この梅寿が落語の可能性を見せるというところに、作者の本格の可能性を信じる、という姿勢を垣間見ることもできるのではないでしょうか。

いささか手前勝手な読みを展開してしまいましたが、読んでいると、つい落語が聞きたくなってしまうミステリです。とくに作中にタイトルが出てくるものなどを聞いてみて、もう一度、読み直すとさらに新しい発見があるやもしれません。

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2006年12月18日 (月)

怪盗グリフィン、絶体絶命

『本格ミステリ・ベスト10 2007』のマイ・ベスト5の中でも取り上げさせていただいたのですが、昨年読んだものの中で、とくに印象に残ったものとして、

法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』を挙げておきます。

ニューヨークの怪盗グリフィンに、ロバート・F・オストアンデルを名乗る男から、メトロポリタン美術館が所蔵する、ゴッホの『自画像』を盗んでほしい、という依頼が舞い込む。「あるべきものを、あるべき場所に」が信条の怪盗グリフィンは、その依頼に対して、ある作戦で応じるのだが、やがて危機一髪の立場に追い込まれてしまう。

かろうじて命をとりとめたグリフィンは、CIAの極秘オペレーション〈フェニックス作戦〉に巻き込まれ、その指令のためにカリブ海のボコノン島へ向かう。ボコノン共和国のパストラミ将軍が保管している人形を奪取することがその指令の内容だった。グリフィンの華麗なる盗みと冒険が展開されてゆくのだが・・・・・・

法月綸太郎のノン・シリーズものの『怪盗グリフィン、絶体絶命』ですが、作品のスピード感と逆転に次ぐ逆転の展開は、さすがプロット重視の氏の本領が発揮されていて、ミステリーランドというレーベル(児童書)ではありながら、大人も楽しめる良質のミステリーといえるでしょう。さらに〈怪盗もの〉でありながら、結末にはグリフィンによる〈謎解き〉も用意されていて、さすが〈本格原理主義者〉を標榜する氏の主張のようなものも感じられます。アメリカのハードボイルドの味付けをされた〈怪盗もの〉のミステリですが、実は〈本格〉を主張している、という。

さらに、この作品について注目しておきたいのは、表向きは児童向けの冒険活劇の顔をしていながら、裏の顔では、立派な〈アメリカ〉批判となっているところ。田中宇の『アメリカ「超帝国主義」の正体』アメリカ「超帝国主義」の正体 を参考文献に挙げていることだけでなく、これまでの氏の評論活動からもうかがえる部分でもあるし、作中の架空の地名ボコノン共和国をめぐる偽史〈サン・アロンゾの虐殺〉などが、〈アメリカ〉の〈歴史〉と接続されて語られる点(ちなみにここはカート・ヴォネガットの『猫のゆりかご』猫のゆりかご へのオマージュ)、そして、グリフィン自身がCIAの指令で動きながら、そこには常に懐疑的であり、取り込まれてゆかない点など、全編にわたり作者の政治的な主張が、染み渡っている。

児童書であるべきミステリーランドでそのような政治的な部分があることに難色を示す人もあるかもしれないが、今は学校教育で〈愛国心〉が刷り込まれてゆく時代。これぐらいの〈抵抗〉はむしろ必要であるといわなければならないだろう。それに〈政治的でない〉というあり方は不可能であり、ニュートラルであろうとすることも、〈骨抜き〉という政治性に見まわれているともいえるのだから。

もちろん、作者が政治性の〈刷り込み〉を子供たちに向けて行なっている、と言っているわけではない。正確には現在のアメリカのネオコンによる世界支配に対する、一つの声として〈本格ミステリ〉の立場から楔を打ち込もうというのが作品のねらいなのだろうと考える。

最後に、この作品の舞台が〈カリブ海〉に設定されていることには、ある作家のある作品の影響があるのでは・・・・・・と考えているのだが、それについては、もう少し調べてから・・・・・・

とにかく、せっかくなのでシリーズ化してほしい。ミステリーランドでなくてもいいので。

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2006年12月 9日 (土)

『本格ミステリ・ベスト10 2007』

やっと出ました。

『本格ミステリ・ベスト10 2007』

本格ミステリ・ベスト10〈2007〉

やっぱり、自分の原稿が活字になるのは、いつも嬉しいものです。とくに今回は市販されている本なので。

でも、私の文章はともかく、2006年の本格ミステリの状況がよくわかるので、是非、手にとっていただきたいです。

中身に関しては、また少しずつ触れていきますが、やっぱり道尾秀介が来ましたか・・・・・・という感じです。今年は、道尾秀介と三津田信三と島田荘司の一年だった、というのは、まさにその通りだった、と思います。

自分のランキングでは、5位以内には道尾秀介を入れただけですが、かなり迷うのです。5作品しか投票できないので。

それと、ランキングの原稿の時に、法月綸太郎の『怪等グリフィン、絶体絶命』の「、絶体絶命」を書くのを忘れてしまって(自分では書いたつもりだったんですけど)、気づいた時にはもう遅く、法月先生には失礼なことになってしまいました。申し訳ありません。

反省。

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2006年11月12日 (日)

二度目のお詫び

長い間(2カ月もの間)、ブログをサボってしまい、申し訳ございません。

二度目のお詫びです。

ちょうどこの2カ月間、面倒な仕事を始めてしまい、その結果、まったく自分の時間が作れず、ブログを書く余裕がありませんでした。

そちらの仕事は先日、退職しましたので、もう大丈夫です。今後はまた、なるべく更新してゆくように努力してゆきますので、閲覧してくださっているみなさん、見捨てずに時々、覗いてやってください。

はじめから、その面倒な仕事を引き受けなければよかった、と今となっては思うのですが、まあ、これでよかったのかも、とも思います。身の回りが整理できてすっきりしました。今の職場は本当に楽しいので、なるべく続けたいのですが、生活が厳しいので、4月以降どうしよう・・・・・・といった状況です。

そんな風に2カ月もサボってきたブログを、見捨てずに時々、閲覧してくださっていた方、本当にありがとうございます。最近、ブログのアクセス解析のシステムが変わって、一日、何人の方が来てくださっているのかが、よりわかりやすくなりました。こんなにサボっているにも関わらず、この二ヶ月間、一日平均10人の方が来てくださっていて、見捨てずに見てくださっているようで、感謝の気持ちと本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。そんなみなさんの期待に応えるためにも、ブログも含めて、もう一度、頑張らないといけないなあ、と思っております。

最近の状況ですが、作家の小森健太朗さんからの紹介で、原書房という出版社から、本格ミステリ・ベスト10 (2006)

『本格ミステリ・ベスト10 2007』(画像は2006年分)の原稿のお仕事をいただき、先週今週はそれに追われてました。12月の初めくらいには出ると思いますので、もし、興味を持っていただける方は、手にとっていただけると嬉しいです。私の原稿はともかく、今、第一線で活躍されているミステリの作家、評論家の先生の原稿は満載ですし、そして何より2005年11月から2006年10月の間に発売された本格ミステリのベスト10ですので、ブックガイドとして必ず役に立つことと思います。

2006年の本格ミステリの状況としては、評論面で、2005年に発表された東野圭吾の『容疑者Xの献身』容疑者Xの献身

をめぐる論争が、一番大きな出来事でした。私はどの立場に与するものでもありませんが、『容疑者Xの献身』は、小説としては本当に面白い小説ですので、オススメしておきます。ただ、個人的には、本格ミステリとしては、石持浅海の『扉は閉ざされたまま』(2005年2位)扉は閉ざされたまま や他の作品の方が、高く評価されるべきかな、と考えています(詳しくは、私のホームページ『天知探偵事務所』の探偵小説百花繚乱のページをご参照ください。そちらも長いこと更新していませんが・・・・・・。http://members14.tsukaeru.net/amachi/ )

作品の方では、そういった昨年のような目玉作品はないのですが、本格ミステリとしていい作品は結構あったように思います。また、このブログでも紹介してゆく予定ですが、ベスト5の投票は、「端正な本格」という言葉と「小説としての面白さ」ということにこだわって投票しました。さあ、今年は誰のどの作品が1位をとるのでしょう。子供の頃、歌番組「ザ・ベストテン」で、年末に年間ベスト10の発表があったのが、本当に楽しみだったのですが、それを待つような(?)気持ちだと言えば、ミステリ読者以外の方にはわかっていただけるでしょうか。ベストテンがわからへんか・・・・・

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2006年2月 3日 (金)

『有限と微小のパン』

有限と微小のパン

ちょっと前の作品なのだが、

実は、読まねば、読まねば、と思いながら、今まで読み損ねていたので、今回、江戸川乱歩の「パノラマ島奇談」パノラマ島綺譚―江戸川乱歩全集〈第2巻〉 の論文を書かないといけない事情から、やっと読むことができた。

というのは、評論家の佳多山大地さんと鷹城宏さんの出されている本で『探偵小説美味礼賛』の中で『有限と微小のパン』について書かれた章(鷹城宏さんの文章)で、パノラマについての言及があったからである。

森作品は、どうも登場人物が少女マンガを彷彿とさせるので(よく言われるところだが)、どうも苦手で、つい手をひっこめてしまう。

が、今回は意外に面白く読めた。

一つはエヴァンゲリオンの影響が随所に見られたところ。

萌絵のモノローグなんかは、「ああ、これはエヴァだ」と思いながら、読んでいた。

それから、脳科学との接点が感じられるところ。

今回のVR技術は、これは認知科学の領域である。

『マトリックス』や『攻殻機動隊』あたりの影響かもしれないが、一つの同時代的な認識ともいえるだろう。

たとえば京極夏彦の京極堂シリーズなんかも、実は認知科学の流行と同時代的な文脈で捉えないといけないのでは、と最近、思っている。

そして、前掲の鷹城論文の卓抜なところは、それを19世紀に流行した「パノラマ」という装置と結びつけて考察するあたりである。

ここにおいて『有限と微小のパン』と乱歩の『パノラマ島奇談』が、ひとつの線上に貫かれた。

萌絵たちにVR技術を見せる塙理生哉は、菰田千代子にパノラマ島を見せる人見広介と同じ人種なのかもしれない。

逆に言うと、そういう形(認知科学との接点)での「パノラマ島奇談」の新たな読みということも可能かもしれない、とも思った。

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