三津田信三『首無の如き祟るもの』
ここのところ自分自身を見失っている感じなので、
そういう時は、仕事仕事と、探偵小説のことばかり
考えるようにします。
私の人生においてつねに、孤独を癒してくれたものは、
探偵小説であり、謎と論理の物語の魅力であり、
名探偵の名推理であったわけです。
もうじき本格ベスト10の投票があるので、
そろそろおさらいをしていかないといけない状況です。
その今年のベスト10の上位に必ず食い込んでくるだろうな、と思っているのが、
(いくつかあるのですが)
三津田信三の『首無の如き祟るもの』(原書房)です。
東京の奥多摩地方の媛首(ひめかみ)村に代々続く、秘守(ひかみ)一族の次期当主の花嫁を選ぶ伝統的な儀式「婚舎の集い」において、殺人事件が勃発した。当主の長男・長寿郎の花嫁候補三人のうちの一人が首無し死体で発見される。しかも、現場からは長寿郎の姿も消えてしまうのだが、儀式の行なわれた山は、密室状態で、謎は深まる一方である。秘守一族は、いがみ合う三つの家が跡目を争っており、混乱が続く中、第二、第三の首無し死体まで発見されるのだ。古くから、秘守家を祟り続ける淡首(あおくび)様の怨霊の仕業か、それとも、巧妙なる連続殺人か……
首無し死体、四重の密室、男装の麗人、淡首様の祟り、謎の妖怪・首無しなど、本格ミステリファンだけでなく、ホラーファンも楽しめる要素がいっぱいのホラー系本格ミステリの傑作。
まず、やっぱり嬉しいのは、地方の旧家の因習に囲まれた土俗的な世界観。
まさに横溝ワールドの再生といった感じがミステリ・ファンには嬉しいところです。ああ、横溝正史が生きてたら、こんな新作を書くかもしれない、という雰囲気。読んでいると、自分も秘守家を(来訪者として)訪れていて、事件に立ち会っているようなリアリティを感じさせてくれます。
そして、もう一つ。戦後の探偵小説文壇の探偵小説ブームと世界観を接続させてくれているところも、ファンには嬉しいところ。
探偵小説通でない人には、とにかく首無し死体がゴロゴロ出てくるところを楽しんでもらえるといいかな、と。これでもか、という具合に、首が切断されます。
しかも、探偵小説においてはつねに、「なぜ切断されなければならなかったのか?」という命題があります。
それに対して、新しい解ではないのだけれども、いくつかを見事に複合させ、ひねってひねって、ひねりまくっているところに、この作品の魅力があります。
事件の真相を知った時、思わず「見事」と思いました。
本当に上手いです。
結末の二転三転(もっと)する、どんでん返しの連続にもびっくりさせられますし(ちょっとあざといかな? とも思ったのですが、ラストの結末で納得しました)、何よりも、「たった一つのある事実に気づきさえすれば」事件の謎が解けてしまう、というところがよくて、実際に探偵役の刀城言耶がそれを指摘したことによって、ぱたぱたぱたと謎が解けてゆく心地よさは、まさに本格の基本といった感じでたまりません。
私は、すっかり騙されてしまいました。
そして、ラストはホラーの味も、もちろん出てます。
全然、評論家らしいことが書けず、すみません。
ミステリについて書くときは、慎重になってしまいます。
もし、この作品について論じるのであれば、「探偵小説マニア」という切り口から入ることになるのかもしれません。
また、へこんだら、ミステリについて書いてみます。
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